まあやんの 徒然なる日々

お薦めの本の紹介と移ろいゆく日々の中から目にしたことを綴るブログです
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# 「山月庵茶会記」
JUGEMテーマ:気になる本



    【こんな一冊の本】






      山月庵茶会記






  ================================================




  葉室麟氏の『山月庵茶会記』(講談社 2015/04刊)を
  読んだ。

  “茶会記”とあったので、もっと茶会の場面が登場す
  るだろうと勝手に期待をしてしまったようだ。

     考えてみれば、ここで「茶会」は素材なのだ。

  アマゾンにはこんな紹介がある。

  茶を点てる心は、相手に生きて欲しいと願う心―かつ
  て政争に敗れ、黒島藩を出た柏木靱負が、千利休の流
  れを汲む高名な茶人となって国に帰ってきた。孤狼の
  心を胸に秘めた男は、家督を養子に譲り、山裾の庵に
  隠遁する。今日も山月庵に客を招く。抗争の最中に喪
  った、妻の死の真実を知るために。

  おもしろいとは思うが。

  茶道と小説のコラボレーションは井上靖氏の『本覚坊
  遺文』や山本兼一氏の『利休にたずねよ』などが挙げ
  られるが、これからも佳作が多く出版されるのを期待
  する。



  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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# 「ラストレター」
JUGEMテーマ:オススメの本


 
 
  【こんな一冊の本】
 
 
 
 
 
      ラストレター 
 
 
 
             
 
 
    
 
                さだ まさし/作 
 
 
 
 
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 “起死回生”を叫ぶ担当者。周りはその声に時間がただ過ぎ
  行
くのをじっと我慢を強いられる。

 
どこの企業でもよく見られる構図。一見、大変そうに思えそ
 う
だがそれすら何故か儀式めいて思えるのは第三者からの視
 線で
読んでいるからだろうか。
 
 舞台はJOPR東亜放送。ラジオ放送制作局の「米騒動」で
 賑
やかに幕は開く。
 
 “米”とは「※」を指し、聴取率が1%以下の番組のそれを
 表
す。その“米”を刈れと、つまり聴取率をUpさせろと編成
 ・制
作局長に就任したでやる気満々の駒井の“檄”が室内に
 こだま
する。

 
だが。
 
 よく読めば、風は吹いているのに池の水は意外とおだやかに
 満
々とたたえていることがわかるだろう。のるまんじいの単
 なる
思い違いか、はたまたお得意の妄想か?
 
 何しろこの制作部、会社の解放区よろしく個性的過ぎる古参
 プ
ロデューサーたちで占められている。
 
 その穏やかな湖面に1個の石を、突然投げ込んだ男がいた。
 
 入社4年目のアナウンス部の寺島尚人、本書の主人公その人
 で
ある。と、書けばエラい“カッチョイイ”ヤツとなるがそ
 うは
いかぬ。大体この会議に出る資格もなく、まだ“ボウズ
 ”と呼
ばれ、まともに名前で声をかけられる領域にいない、
 どちらか
といえばまだ新人の卵のかけらが尻にくっついてい
 るかも知れ
ぬ。

 
その彼が「一石」を投じたにはちょいと訳がある。自分があ
 て
がわれている机の向こう側に陣取っている大越大五郎が石
 を投
げさせた張本人だった。
 
 大五郎――か。
 
 『子連れ狼』の主人公、拝一刀が乳母車に乗せて旅するわが
 子
の名前か、もっと古ければ大相撲元関脇でハワイ州出身の
 高見
山関か、それともテレビCMで流れる焼酎の名前か―ー。
 
 いずれにしても本書の読者層として、「団塊の世代」前後を
 狙
って、そんな計算が作者さだ氏に働いているというのも読
 み過
ぎだろうか。

 
そうでなくても、「これ若者には分かんねえだろうなあ」と
 思
わせるような“くすぐり”がたくさん使われている。ああ、
 こ
れってさださんあたりの年代じゃなくちゃ書けないよなあ
 と反
対側からも思う。
 
 だって。
 
 この大越大五郎氏を表すのに、“異次元の生きた伝説”と呼
 び、
アンドレ・ザ・ジャイアントそっくりとか。マグマ大使
 のゴア
みたいとか。魔法使いサリーちゃんのパパ似だとか。
 のるまん
じい世代であれば、予備知識も何も不要で瞬時に笑
 えるに違い
ない。
 
 「昭和が、まんま生きている」そんな作品になっているのだ。
 
 さて。
 
 この“張本人”。最古参のPらしいが。
 
 場所も時も憚らず、大音声で「オ××コ」なる雄叫びを上げ
 る。

 
 この大越がテラちゃん(寺島のニックネーム)に向かって囁い
 た。
まるで悪魔のささやきのように。
 
 「昔の深夜放送には体温があった」と。
 
 「たかが1枚の葉書を書くのに、ものすげぇ勇気が要ってよ
 、
書いたって読むまれねえのによ」
 
 本書を読んでいけば、東京在住の読者なら、舞台が新宿四谷
 に
本社を構える「文化放送」だとすぐにお気づきになるだろ
 う。
それでもって、沿革を改めてこの作品で知ることになっ
 ただろ
う。
 
 深夜放送といえば、以前も書いたけれど、のるまんじいが高
 校
生の頃、文化放送の『セイ!ヤング』、ニッポン放送がキ
 ー局
だった『オールナイトニッポン』、そしてのるまんじい
 が眠い
目をこすりながらちょっとだけ聴いていた『パックイ
 ンミュー
ジック』が競い合っていた。
 
 のるまんじいは、あるいはその周辺は『パックインミュージ
 ッ
ク』派が多く、キンキン(愛川欣也)、ナッチャコ(野沢那
 智・
白石冬美)担当の日が待ち遠しく、リクエスト葉書を読
 んでも
らえた翌朝は学校で「読まれたな」なんて声をかけら
 れたもの
だった。なんとも郷愁がじんわりとあふれてくる。
 
 閑話休題。
 
 その大越がテラちゃんに吐かせてしまったのだ。
 
 深夜放送の復活を駒井以下みんなの前で。しかも、
 
 「視聴覚教育って言葉を思い出せ!とにかく誤魔化さず、正
 し
いと思うことをやってれば数字なんか黙ってついてくるん
 だよ、
わかんねえのか!?この、オ×××ヤロー!」その後
 の「と、
仰っています」はそこの場にみんなの耳に届いてい
 たかどうか
……。
 
 その挙句、テラちゃんの身に火の粉が飛んできたのは火を見
 る
より明らかなことだった(笑)。
 
 本書を通して読めば、テラちゃんこと寺島尚人の成長物語だ
 と
わかる。そして、この大越、したたかでテラちゃんに火中
 の栗
を拾わせた確信犯だということも徐々に明かされていく。
 その
“何故か”なんかをここで披露する程のるまんじいも野
 暮では
ない。ふたりの出会いを読まれたい。
 
 また、登場人物の多いこと、そしてまた、個性あふれる面々
 に
悪人が登場しないことを知るだろう。それがライバル局の
 人間
であったとしても。
 
 三島事件のスクープをしたという三井社長を始め、大越と共
 に
テラちゃんを支えるベテラン人気女子アナの小牧姐さん、
 それ
からもう次々と現れてくること、あらわれてくること…
 。

 
 また、本作品を味わい深くしているが、テラちゃんたち東亜
 放
送局員が常連にしている四谷3丁目近くの居酒屋“ちょい
 都”
を切り盛りしている店主夫妻がまたいいこと。本当にこ
 んな店
があの界隈になら暖簾を下げていてもちっともおかし
 くないし
あってほしいと思うぐらいだ。
 
 都勇太郎、時子夫妻の邪魔にならない姿と物語に襞を刻むそ
 の
姿が何ともいいのだ。さださん、きっとこのふたりにはモ
 デル
がいて、登場させたに違いないそう思うのだが…。
 
 さて、波乱万丈というか、とんでもない大海原に小舟で漕ぎ
 出
すはめになったテラちゃんに大越がかけた激励は、
 
  「心に愛がなければどんな言葉も人の心に響かない」
 
 だった。聖パウロのことばだそうだ。
 
 さてさて。この先一体何が待ち受けていることだろうか?
 
 もちろん、本書の題名が『ラストレター』というところから
 、
おおよその見当はつくけれども、それでも行き着く先まで
 の行
程が何とも読んでいて楽しかった。
 
 おそらくだが。
 
 さださんが、実験的に(?)NHK総合テレビで『今夜も生で
 さ
だまさし』なる番組に出演しているが、これをすっかり思
 い出
してしまった。パーソナリティーを務めるのはまごうこ
 となく
さださんその人で、放送作家の井上知幸氏、そして音
 響効果の
住吉昇氏が両脇を固め、ともかくこちらはテレビだ
 から視聴者
が寄せる葉書を読んでいくという番組である。原
 則葉書以外は
受け付けていないのも本書と同じだ。
 
 運がよければさださんの歌が2曲ぐらい聴け、その逆に全く
 な
かったこともあった。
 
 この番組の流れや様子も本書に遺憾なく生かされているよう
 に
思う。
 
 それもともかくとして。テラちゃんの器を見抜き成長させて
 い
く大越の懐の深さ、また同僚たち放送業界で働く人々の姿
 を垣
間見て愉快、痛快…、爽快。
 
 笑いあり、涙あり、これ映画で観たらさぞかし楽しいだろう
 と
思った。涙あり、なんてものではなかった。もう、“号泣
 ”、
止まらない、とまらない…。
 
 ここで最後に独り言。どこかの小さなFM局からでも「話を
 し
に来ませんか」なんて、呼ばれるそんな人間になりたいも
 のだ
と思った。野望?妄想?もう何でもいいや。段々じいさ
 んにな
ってくるとあれもこれもやっておきたくなるようだ(
 笑)、滑舌
よくないのにね。
 
 ハハっだ!
 
 一般向け。団塊の世代からのるまんじいの世代、そしてあと
 少
し年下の年代まではリアルタイムで経験しているので楽し
 める
ものが違うだろう。それ以下の方にとっては、完全にフ
 ィクシ
ョンのそれだろう。それだっていいだろう。どっぷり
 “昭和”
につかってみるのも。
   
 
  
=========================================================
 
 
 
 
     さだまさしオフィシャルサイトは
 
 
       
http://www.sada.co.jp/index.html
 
     
 
 
     「さださんの本と詩にちなんで」


 
 
 
     
「 23時間57分のひとり旅」 
 
 
 
 
     
「親父の一番長い日」 
 

 
 
      
「われもまた紅なり」
 
 
 

      
「薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク」
 
     
 
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# 「我れ、美に殉ず」
JUGEMテーマ:オススメの本


 
 
   【こんな一冊の本】
 
 
 
 
 
        我れ、美に殉ず
 
 
 
    
 
                  小嵐 九八郎/作
 
 
 
 ==============================================================
 
   
      
 
             
  本書の題名を
 
 
           『我れ、美に殉ず』
 
 
                    という。


  
以下のような章立てになっている。
      
 
   第1章 これ、この一作に悶え、死す  
 
 
                        久隅 守景
 
   第2章 流刑にて魂は目覚め      
 
 
                        英  一蝶
 
   第3章 生きとし生ける物へ      
 
 
                      伊藤 若冲
 
 
   第4章 負を力へ、失いしものを深追いして
 
 
 
                      浦上 玉堂
 
 
 
  それぞれが約260年続いた江戸時代のそれぞれの文化、時
  代
を生きた代表的な“絵師”たちで、時系列  に取り上げ
  られてい
る。

  
本書を知ったのは、講談社からの新刊紹介メールだったか、
  そ
れともある新聞の書評に載ったのを読んだんだったかだと
  思う。

  
既にのるまんじいの
「若冲の『象さん』とご対面」をご存知
  の方であれば、4人の中に伊藤
若冲が採られていたから、の
  るまんじいが読んでみようと思っ
たのだろうと直感されたに
  違いない。

 
  正しくその通りだった。が、実はもう1つの理由があった。
 
  それは第1章で取り上げられている久隅守景の存在があった。
 
  少しばかりの寄り道をしばし許されたい。
 
  久隅守景――
 
  この絵描きをいつ頃知ったんだっただろうか。
 
  いかばかりか遠い記憶の糸を手繰れば。おそらく、何処か名
  家
の入札会かはたまた好事家に頒布された図録でだったか、
  もし
そうであれば、和綴じのそれに作品が載っていたのでは
  ないだ
ろうか。
 
  そうでなければ、それなりの大寄せ茶会か、茶事の会記で出
  会
ったか、ともかく何れを問わず作品とその名前を脳裏に刻
  み込
むこととなったに違いない。
 
  代表作といえば、誰が何と言っても本書に写真が載る国宝『
  納
涼図屏風』(東京国立博物館蔵)、これだろう。さて、本作
  品と
のるまんじいは直に対峙したことがあっただろうか。残
  念なが
らこれがよく覚えていないのである。見たかもしれな
  い、もし
かすると…。
 
  写真で見ても、この1枚の持つ力は計り知れない。
 
  この1枚を描くに至ったその「道程」を作者小嵐九八郎氏は
  紡
ぎ出している。
 
  幕府の御用絵師として世に権勢を誇り、鍛冶橋狩野家を興し
  た
探幽の姪の国を娶り、探幽の四天王の最右翼といわれる地
  位に
あった守景。それが、自身の息で、同じ門下で絵師の道
  を歩ん
でいた彦十郎が悪所通いの不行跡から破門に、やがて
  佐渡へ遠
島送りに。ばかりか娘雪信までが同門の塾生と駆け
  落ちをし、
守景自身も始末から地位をすべて失うことになる。
 
  狩野家の息の強い江戸にいられなくなり、伝を頼り、金沢の
  前
田家の下へ。しかし、後ろ盾の何もかもを失った守景の生
  業は
そこでも予想以上に厳しいものだった。
 
  その行き着く先に『納涼図屏風』はあった。
 
  蛇足と知りながら。
 
  この作品は豊臣秀吉の正妻北政所ねねの甥木下長嘯子(ちょう
  し
ょうし)の和歌
 
 
     
      夕顔の さける軒端の 下涼み 男はててれ
 
 
                  女はふたの物
 
 
  から着想を得たとされている。なおなお、ててれとは襦袢や
  褌
のこと、ふたの物は腰巻のことだという。
 
  長嘯子に関してのるまんじいはとても関心があり、いつかこ
  こ
で取り上げたい人物である。
 
  それにしても、これ以上語ってしまえば、読む楽しみは失せ
  て
しまうだろう。で、ここに記さない。
 
  晩年を娘の雪信が住んでいるという消息を頼りに京都に落ち
  着
く。ここで、小堀遠州と千宗旦に師事したという藤村庸軒
  の知
遇を得る。2人の味わい深い交流を読んでいただきたい。
 
  さて。
 
  伊藤若冲である。
 
  本書では意外な若冲が登場した。

  
ご存知のように若冲は京都錦小路にあった青物問屋「枡源」
  の
跡取り息子であった。その息子、ひがな飽かずに道端を行
  く虫
たちの姿を見つめ平べったい石の上に描くのだった。思
  わず宮
尾登美子氏の『序の舞』に登場する少女津也、後の上
  村松園の
それと重なった。画才のある子どもは時代が違えど
  “栴檀は双
葉より芳し”であると。それも同じ京都で、津也
  は葉茶屋の娘
であった。
 
  おっと、若冲だった。
 
  若冲の目は虫だけに向けられていたのではなかった。生きる
  も
のすべて、それは動植物を問わなかった。それらが持って
  いる
“生きる”への熱さがなんなのかを懸命に追いかける。
  これが
若冲にとって一生の課題であったのかも知れない。

  
「流れ流れゆく生き物や人や物のその瞬きの時に、永遠(と
  わ)
の命が潜む」と若冲に語らせている。

  
その若冲が汝鈞と名乗っていた少年から青年に脱皮しかけた
  頃、
出会ったのが相国寺の僧、“梅坊主”こと後年住持に就
  く大典
顕常その人であった。この2人の出会いは本書で読ん
  でほしい。
成程、それで相国寺に若冲の大作が蔵されている
  のかと得心す
るのである。

  
大典は若冲に「美の許しの粋として奇怪の“奇”も、風狂の
  “
狂”も京は許す」と教え諭し、『老子』から引用して「若
  冲」
と名乗るよう居士号をも授けた。

  
「大盈は冲(むな)しきが若(ごと)く、其の用は窮(おさ)まら
  ず
」から来ているという。意味を調べて当人はもっといい居
  士号
はあらへんのかと独り言ちている。時に35、「若冲」の
  誕生で
あった。

  
若冲にとって大典はただのアドバイザーではなかった。
 
  それではと、は本書を読んでいただきたい。
 
  狂おしいまでの若冲の思い。やるせなさ。若冲の思いがひた
  す
ら絵を描かせる。
   
  52歳の時。春の弥生のことである。
 
  高瀬川から淀川へと大典と若冲を乗せた日除船は進む。
 
  この場面は切ない。若冲ファンだったらなおさらのことだろ
  う。
野暮は言うまい。ただただ読まれたい。涙が、若冲の胸
  の思い
を知って落ちそうになる。
 
  ここまでしなくてはいけないのだろうか、と。

  
本来であれば、書かないほうがよいだろうが。

  
若冲73のときに京都は大火に遭っている。応仁の乱以降300
  年
ぶりのそれであったという。
 
  家を、そしてすべてを若冲は失っている。しかし、相国寺に
  納
めた『釈迦三尊像』を始めとした作品群は大典を始めとし
  た僧
たちがすべて守り抜いたという。
   
  ということはだ。この前東京富士美術館で合間見えた「象さ
  ん
」は、この大火のすぐ後、失意呆然の中で、いや錦の店の
  再興
のため、弟妹たちの糧のため東奔西走し、また生きるた
  めに絵
を描いていたころとなる。となれば、あの象の中に潜
  んでいる
若冲の思いは全く違ったものになってくる。
 
  若冲はん、ほんまにお疲れさまやったねえ。
 
  墓所は相国寺と伏見深草の石峯寺にあるそうだ。晩年石峯寺
  の
門前に居を構えた縁で、境内には自ら下絵を描いた五百羅
  漢像
があるという。天井絵も描いたそうだ。黄檗宗の寺と聞
  いて万
福寺の明(ミン)風の伽藍を思い出す。
 
  さてさて。
 
  三宅島に流罪になった英一蝶の凄まじい生き方、自らの身体
  に
負をおいながら脱藩して絵を描く道を追い続けた浦上玉堂、
  や
はり常人ではないのだろう。
 
  もちろん、題名にあるように自ら任じて「美に殉じた」訳で
  は
決してなかろう。おそらく4人が4人ともそうは思ってい
  ない
だろうと思う。第三者から見て、結果そうなった。ある
  いは、
そう「見える」だけであろう。違和感がぬぐいきれな
  い。まあ、
そんなのどうでもいいか。
 
  それにしても、下半身のことばがこれでもかとばかりにぽん
  ぽ
んと出てくる。ほとほと疲れたというのが正直なところで
  あろ
うか。もうわかったわかったという具合に。
 
  江戸時代を代表する絵師と書いたが、絵画に詳しい人たちで
  な
いと知られていないかも知れない。まあ、当人たち、それ
  がど
うしたというだろう。関係ない、と。それよりもこの中
  の絵師
ひとりにでも興味、関心をお持ちだったらぜひご一読
  をと、お
薦めしたい。不可思議な世界へ誘(いざな)ってくれ
  るに違いな
い。
 
    
==============================================================

 
 
 
 
        伊藤若冲の、ゾウさんの・・・


                        (盟友女史/著)
 
 

==============================================================
 
 
 
 
     相国寺のホーム・ページは
 
 
 

     

        http://www.shokoku-ji.jp/s_about.html



 
 
 
     石峯寺のホーム・ページは
 
 
 

        http://www.sekihoji.com/

 
 
 
  
 ==============================================================
 
 
 
 
        我れ、美に殉ず
 
 
 
    
 
                  小嵐 九八郎/作
   
 
         
      
             2014年5月 初版 講談社刊
             
 
 
 
          講談社BOOK倶楽部のホームページは
 
 

       

            http://bookclub.kodansha.co.jp/


     
   
 
   
   ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
   ==============================================================
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# 「教室の亡霊」
JUGEMテーマ:オススメの本


   【こんな一冊の本】
   
 
 
    教室の亡霊
                    
 
 
 
                   内田 康夫/作   

 
              
 ==============================================================
 
   
  内田康夫デビュー30周年記念3カ月連続刊行としての第1作目
  
が、この教室の亡霊という作品です。ちなみにあと2作は
  『神苦楽島』(文藝春秋/)『不等辺三角形』(講談社/)です。
  
それにしても、30年も書き続けるのは大変なことですね)
 
  3作とも内田さんお得意の浅見光彦シリーズです。
      
  今回は、群馬県のある中学校の教室で男性が殺されたことに端
  を
発した事件の真相を浅見さんが追及していく物語ですが、そ
  の根底には、以前大分県で実際にあった教師採用不正問題と同
  じものがあります。
 
  おそらく今回は、殺人事件そのものよりも、この日本の公教育
  界に一石を投じたいという思いが内田さんにあったのでは、な
  いかと思いました

  
のるまんじいは、この舞台と同じ環境にある保護者たちよりも
  
現在の中学生たちがこの1冊を読んだらどんな思いを抱くだろ
  うかとその方が気になります。

  
今、教壇に立つ先生方は、もし、この本を読んで不信感を覚え
  た「教え子」たちがいたとしたら、しっかりと向き合って質問
  に答えられるでしょうか?「また適当にごまかしている」と言
  われないように。

  
「世の中なんて、所詮こんなもんだよ」と子どもたちには言わ
  
せたくないですよね。

  
殺人事件そのものの方は、いつもよりも「さらっ」と書かれて
  
いるでしょうか?(笑)犯人が簡単にわかっちゃいますもん。

  
のるまんじいが、この本を読んでよかったなと思ったことを書
  
いておきましょう。

  
それは、マドンナ役の梅原彩さんの窮地を救おうと浅見さんの
  
出馬を知りあいに頼んだ、彼女の教え子で陸上部員の中2の竹
  
内一記(かずのり)くんとモンスターペアレントが教室に突然
  
現れて、担任の先生をこれでもかと困らせたという事件を浅見
  
さんに話した、甥にあたる中1の浅見雅人くんの描き方にあり
  
ました。

  
ふたりとも、使い古した言い方ですが「ちいさな紳士」なんで
  すね。今でも、こういう素直で親しみの持てる少年がいるんだ
  なあと好感を持ちました。というより、こういう少年が内田康
  夫さんが思い描く少年像なんだろうと思ったのです。また、こ
  んな「ちいさな紳士」のひとりが後の浅見光彦になったのでし
  ょう。

  
それにのるまんじいが共感したということは、幾分か古いタイ
  プの少年像かもしれませんけれども……(笑)。

  
でも、このふたりが登場してくれたのは、うれしいですね(笑
   )。

  
最後に。

  
題名が教室の亡霊とあるのに、表紙には赤い屋根の鎧窓が
  
開いている洋館が描かれています。この違和感はなんだろうと
  
思っていましたが……。

  
それと。

  
めずらしく挿絵があったことを添えておきましょう。

  のるまんじいは3作中の本作品が1番好きです。

  
一般向きですが、中学生、高校生にも読んでほしく思います。


 
==============================================================
 
 
 
            教室の亡霊

                    
 
 
                  内田 康夫/作
 
   
   
            2010年2月 初版 中央公論新社刊
 
 
 
               中央公論新社のホームページは
 

 
             
http://www.chuko.co.jp/
 
         
 

   ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
   ==============================================================
 

 
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# 「風のなかの櫻香」
JUGEMテーマ:オススメの本

 
    【こんな一冊の本】




    風のなかの櫻香                       
 



                 内田 康夫/作    
 
 
   =======================================================


   
記事を書いたのはもう何年も前のことになります。舞台にな
   っている季節が丁度今ごろのことと前回ご紹介した『ならく
   んとかまくらくん』つながりです。(笑)

   
本屋さんで平積みにされているこの本の表紙を初めて見たと
   き、
それはもうドキっとしました。何しろ漆黒の闇に花びら
   を散ら
す桜と奈良、斑鳩の里にある中宮寺さんの半跏思惟の
   みほとけ
がまことに印象的に描かれていたのですから。

   いつもの浅見光彦シリーズの最新作を図書館で借り出せるの
   を
辛抱強く待ちました。期待はより高まるものです(笑)。マ
   ンネ
リ化なんて通り越しているというご意見もお見受けしま
   すけれ
ど、まずは読んでみて、それでよければ言うことなし
   というの
がのるまんじいの考えですので、マンネリだろうと
   そうでなか
ろうとあまり気にはしません。

   これについての考えは今でも同じです。

   
さて、物語はその中宮寺、いえいえ本書では尊宮寺となって
   お
ります。近松門左衛門が唱えたところの“虚実皮膜”の世
   界が
ここでは展開されています。

   この尊宮寺にひとりの幼い女の子が施設から貰われてきます。
   
名を櫻香(さくらこ)と呼び、「御前様」と呼ばれる日野西
   光
尊門跡(こちらは実在の方です)の養女として育てられま
   す。
育つに連れ、容姿はもちろんのこととても聡明な少女に
   なりま
すが、その中1になった櫻香の周辺になにやら不穏な
   空気が漂
い始めます。

   そこで御前様から光彦の母雪絵を介して、光彦に事件を解決
   し
てほしいと声がかかり、ゴールデンウィークの混雑が遠の
   いた
新緑のころ、光彦と雪絵は斑鳩の地へと向かうことにな
   ります。

   
本書の帯にはこんなふうに書いてあります。

   「死ぬって、どういうこと?」

   
悲しい宿命を背負った少女を救うのは、浅見光彦の推理か、
   菩
薩の微笑みか。

   
いにしえの奈良の雰囲気がとてもよく表現されていると思い
   ま
す。

     みほとけ の あご と ひぢ とに あまでら の
 
     あさ の ひかり の ともし きろかも

              (会津八一『自註鹿鳴集』より)
  

   のるまんじいは、ここに登場する中宮寺が好きで何度となく
   訪
れたことがあります。直近では、とんでもなく暑いさなか
   での
お参りでしたが、限りなく明るい境内とご本尊の優しい
   微笑み
に出逢うことができ、同行してくれた若い方もそれは
   満足のよ
うでした。

   また、こちらは4月のさくらの終わったころに“山吹茶会”
   を
催されますが、1度だけ随分と昔に参席させていただいた
   こと
があります。ほろほろ山吹の花の散る参道を歩いての席
   入りだ
ったと思いますが、このときに御前様をお見かけした
   のではな
かったでしょうか。

   そんなことを思い出させてくれた1冊です。

   2014(平成26)年の今年は表千家の猶有斎宗員若宗匠のご奉仕
   で
の献茶式、表千家によるお席だったようです。

   これから当分は修学旅行生で混み合う大和路ですが、中宮寺
   ま
では足を延ばしませんから安心です。

   一般向け。奈良が大好きな方、浅見光彦ファンでなくてもど
   な
たでも。お薦めします。


  ==========================================================


    聖徳宗 中宮寺の公式ホームページは



          
http://www.chuguji.jp/
 

    「浅見光彦の家」はいかがでしょう
       

         
http://www.asami-mitsuhiko.co.jp/
 


 ==========================================================



    風のなかの櫻香 
 

 

               内田 康夫/作    
 
 
            201011月 初版 徳間書店刊
             


            徳間書店のホームページは



           http://www.tokuma.jp/
        

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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# 「舟を編む」
JUGEMテーマ:オススメの本

 

 

  

  【こんな一冊の本】


 
 
 
      舟を編む
 
 
 
 
 
                  三浦 しをん/作
 
 
 
  ============================================================
   
   

  今さら本書『舟を編む』の紹介だなんてって、おこがまし過ぎ
  る。
というかこの記事を読んでくださっている方からすれば、
  「もう十
分に分かっておりますよ」と言われてしまいそうな気
  がする。

  
映画『舟を編む』が大ヒットし、第37回日本アカデミー賞最優
  秀
作品賞を始めほか6部門で賞を獲得。現在でもなお、“凱旋
  公
開”と銘打って劇場でかかっている。映画は映画館のスクリ
  ーン
の大きさで観るために作ってある。と、わが盟友女史が語
  ったこ
とがある。まことにその通りである。ということは、ま
  だ映画館で観
られるということだ。

  
また、出版元の光文社のホームページでは売り上げランキング
  堂
堂の第1位。「こりゃ、当分文庫化はないな」と、のるまん
  じいを嘆
かせる。何しろだ、住まいと仕事場のある地域の双方
  の図書館に
1年以上前に予約を入れて、やっとその片方から順
  番が巡ってき
たと連絡があった。それもだ。期間延長不可。後
  ろにまだ220人の
方がお待ちだという。

  
連絡がない方の図書館は、のるまんじいの前にまだ2桁台の予
  約
がつまっているらしい。

  
書店で横目でちらっと表紙を覗いたことはあったが、今手許に
  おい
て見ればまさしく国語辞典『大渡海』の雰囲気そのものに
  違いない。
惜しむらくは本書保護のためラミネートされていて
  作者三浦しをん氏
や編集部の意図が手触りとして感じられない
  ことだ。やっぱり買うしか
ないか。

  
ちと意味は違ううかもしれないが、江戸川柳の
 
 
     本降りになって出て行く雨宿り
 
 
  そんなすっきりしない気分になった。

  
それでも思い続けて1年余りの片思い。やっと念願かなって読
  み
始める。

  
スラスラ、サクサク、フンフン、……、んっんっ、おっとっと、
  えっ


  
思った以上にペースが速い。これって…?そう思いながら読ん
  でいくうちに、もしかして映画のあらすじを
一々確認している
  ?と思いついた。

  
映画『舟を編む』を観ただけでは、分からないが本書を読んで
  みると、失礼かも知れないが、予想以上に映画のできがいい
  だ。本書を読みながら、映画のサイトで予告編を見直して、

  う1度映画観てみようかなと思ったくらいだ。

  
読んでいても、役者がそれぞれ浮かんできて、もう頭から離れ
  
てはくれない。馬締光也は松田龍平さんだし、かぐやは宮崎あ
  おいさんだっ
た。読んで初めてかぐや役の宮崎さんが適役だと
  知った。どう
読んだってもうほかに出てきやしない。

  
それはそれでいいのだ。十分に満足しているのだから。よくあ
  
る「映画は映画」、「小説は小説」と割り切ることが今回はの
  る
まんじいの中では起こらなかったのだな。

  
こうなったら、映画を完全に忘れきってからもう1度読んでみ
  よ
うかな(笑)。

  
映画をまだ観ていなくて、本書を読んでいない方がどうしよう
  
かとお迷いだったら、間違いなく「小説を先にお読みなさい」
  
と薦めるだろう。映画の前に本書は2012年本屋大賞第1位な
  だから。

  
小説でしか語ることができないもの、三浦氏が紡ぎ出した文章
  
そのものをじっくり味わいたいと思うのだ。そのためには、ビ
  ジ
ュアル的に固定される前の方がよい、だろう。

  
それにしても。


  
「辞典を作る」――。


  
めちゃめちゃ面白く、おっそろしく地味な世界を舞台として取
  り
上げたものだなあ。この着眼点がスゴい!他人には真似ので
  き
ない世界。何もないところから、紡ぎ出していく力。表現者
  の力
の何と偉大なことか。

  
真っ先に岩波書店、新村出編「広辞苑」が浮かぶ。あれは第2
  版
だった。今も身近にあって、何かのときは出番が来たかとば
  かりの
表情になる(と思う)。あの大きさ。重量感。初めて自分
  のものになっ
たときのそのうれしさといったらなかった。1ペ
  ージ、1ページを丁寧
にめくったものだった。

  
あれは、中3から高1になるときのことだった。まあ、それに
  ついては
いずれまた。

  
今は思うところあって、三省堂の「新明解国語辞典」を便利に
  してい
る。電子辞書もいいけど、やっぱりこの年代にとって紙
  媒体がいい。

  
閑話休題。

  
この作者。ネーミングのうまいことったらない。

  
まず『大渡海』――。

  
みなさん既にご存知だろうから、ここにぐだぐだ書かないけれど。
  本当
にこんな名前の国語辞典があってもちっとも違和感はない。

  
『玄武書房』――。

  
岩波書店、福武書店、河出書房が頭に浮かんだ。これまた神田か
  市ヶ
谷あたりに看板を掲げてあって可笑しくない。如何にも辞典
  を発行して
いますっていうような名前じゃないか。

  
主人公、馬締光也――。

  
先に「マジメ」がありきで、それから字を当てたんじゃないかな
  あと思わせ
る。

  
となれば、香具矢、この「かぐや」という名前にも何か仕掛けが
  してあるの
だろうか。中秋の名月の夜に飾りがしてある場面で登
  場するから、満月の
夜に生まれたからだけでは浅い読みなのだろ
  うか?

  
サクッ、サクッと読んだときは特に細部に注意が行き届かないも
  のだ。

  
さすが国語辞典編集部が舞台だけあって、「ことば」に対して半
  端ではな
い。作者の本領発揮。このあたりは映画では語り尽くせ
  ない。

  
馬締――

  
両親が和歌山出身で、旅人に馬を差配する問屋場(といやば)の別
  名。

  
「マジメ」が服を着て歩いている、それが辞書編集部の荒木の第
  一印
象だった。定年を迎える自分の後任探しで、荒木と初対面の
  馬締との
会話――。「しま」という音から導き出されることばを
  と。

  
馬締はすかさず「ストライプ、アイランド、地名の志摩、『よこ
  しま』や『さか
しま』のしま、揣摩(しま)憶測するの揣摩、仏教
  用語の四魔…」と挙げて
いく。すげ〜!それにしても揣摩憶測っ
  て何だ?

  
そして「島」を説明せよと求められると、「まわりを水に囲まれ、
  あるいは隔
てられた、比較的小さな陸地」と答えてから、『ヤク
  ザの縄張り』を含んでい
ないということで、「まわりから区別さ
  れた土地」と導き出していく。

  
結果、辞書編集部へ異動となる訳だが。

  
「ヌッポロ一番」――。

  
思わず噴き出した。勘弁してよ、もう(笑)。「サッポロ一番」の
  紛い物のジャン
クフードという設定らしい。

  
月日は流れ。

  
【愛】についての、主任になった馬締と新編集部員岸辺のやりとり。

  
岸辺曰く、同性愛のひとたちが、ときに性欲も伴いつつ相手を慕い、
  大切だと
思う気持ちは愛ではないのか。と。

  
ということは、それまで「愛」の語釈にこの範疇が欠如していたと
  想像されただろ
うか。

  
このあたりは、映画には出てこなかっただろう。用例採集で「BL(Bー
  oys Love)が
出てきたが。「男」や「女」についての語釈についても
  作者は岸辺に語らせている。この辺、
作者の茶目で、もしかすると
  本意かも。

  
何度も繰り返すが、活字でなければ表現のし難いものをうまくすく
  い上げてい
ると思う。

  
外部の専門家と編集部の西岡との執筆依頼での駆け引きの面白さ。
  「恐喝犯」
みたいだと馬締に言わしめた西岡のテクニック。こりゃ、
  読まなきゃ分かるまいっ
て。

  
恐喝された(?)中世文学担当の教授に依頼した“西行”を例に挙げ
  て…。それ
にしてもこれ程派生語があるとは思わなかった。まあ、
  この教授がとんでもない
奴で…。されても当然のような。西岡、ナ
  イス!!と、快哉を上げたくなる!

  
辞書編纂と並行して語られていく馬締と香具矢の恋の行方。ともに
  こちらに関し
ては不器用で、そして臆病で、でも…。
   
  板前割烹の世界で修行中の香具矢の姿は映像の方が想像しやすいだ
  ろう。カ
ウンターに座って…、というアレである。

  
紙への執拗なまでの拘り。これは映像と文章のそれぞれがお互いに
  補ってくれ
ているように思う。細部はやはり文章に寄るが。

  
とにもかくにも、「うまいなあ」の一言に尽きる。「すげえなあ」
  とともに。

  
この記事を書いている翌日、つまりこの配信日には『舟を編む』を
  図書館に返却し
なくてはならない。待っている方のことを考えると
  延滞はできない。

  
同じ楽しさを未知の人と共有したいから。

  
一般向け。こちらも四の五のとはは言うまい。読みたいと思ったら
  迷わずにお読み
あれ。三浦ワールド全開の本書『舟を編む』を。で
  き得るならこれによって辞典の楽
しさも味わっていただきたく思う。
 
 
  ==============================================================
 
 

         映画『舟を編む』公式サイトは

 
 
 
         
http://fune-amu.com/
 
 
 

   ==============================================================
 
 
 
 
        舟を編む
 
 
 
 
 
                       三浦 しをん/作





               
2011年9月 初版 光文社刊
               
2012年4月 10刷
             
 
 
              光文社のホームページは

 
 
             
http://www.kobunsha.com/
      
   
   
   ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
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# 「北斎あやし絵帖」
JUGEMテーマ:気になる本
 

 

 

 

   【こんな一冊の本】

 

 

 

 

       北斎あやし絵帖    

 

 

 

 

 

 

                  森 雅裕/作

 

 

 

   ==============================================================

 

   

      

 

   首都圏では20年ぶりの大雪だったとか。JRを始めとして鉄

   道網はずたずたになり、中遠距離通勤を余儀なくされているビ

   ジネスマンたちでビジネスホテルやカプセルホテルは早々に満

   室になったと話に聴いた。

 

   それに比べて路線バスはがんばってくれていたようで、頼もし

   さが倍加した。

 

   降った雪は北国のそれと比べて水分を多く含み重たく、積もれ

   ば凍って完全に消え去るまでには時間がかかると思われた。足

   元も雪慣れしていない人にはこけて骨折するといった心配がも

   う少し続きそうだ。

 

   他人(ひと)のことをああだこうだと言えるのるまんじいではな

   い。遠くから見た姿は如何にも危なっかしいへっぴり腰でよた

   よた歩きであろう。それにしても、こんな事態に狭い道を我が

   もの顔で“ハネ”をあげて走り去る車の少なくないことか。

 

   また。明けてやんだ家に積もった雪の処理の仕方のうまくない

   ことか。まあ、これだって他人のことは言えぬが…。

 

   ところで。

 

   今回取り上げさせていただいた『北斎あやし絵帖』であるが、

   実はのるまんじい早々に「ゴメンナサイ」をした1冊である。

 

   それでも、取り上げたのは。

 

   今年初めての記事として取り上げた『白い馬』を書こうとして

   いた頃に、ある友人の車に同乗させてもらったことがあった。

   走りながら「こんなのを聴いているよ」と流してくれたのが、

   ヘイリー・ウェステンラ(Hayley Westenra)のものだった。聴

   けば、それはあの有名なヘンデルの「私を泣かせてください」

   だった。

   透き通った声にうっとりと思わず聴き入っていた。続いて流れ

   てきたのが、フリース作曲なのに「モーツァルトの子守唄」と

   世に名高い、これを何気にメロディーを我知らず口ずさんでい

   た。

   そんな時に頭に浮かんだのが、今回の『北斎あやし絵帖』の作

   者の手になる『モーツァルトは子守唄を歌わない』(講談社文

   庫)だった。この作品も未だ取り上げることができていないが、

   ちょこっとAmazonの解説を。

 

   モーツァルトの子守唄が世に出た時、“魔笛”作家が幽閉され、

   楽譜屋は奇怪な死に様をさらす―。その陰に策動するウィーン

   宮廷、フリーメーソンの脅しにもめげず、ベートーヴェン、チ

   ェルニー師弟は子守唄が秘めたメッセージを解読。1791年の楽

   聖の死にまつわる陰謀は明らかとなるか。乱歩賞受賞作。 

   
自ら味付けはできていないが、素直に面白かった。チェルニー

   といえば、ピアノの教則本で有名だし、この本のおかげで(?)

   思わぬチェルニー像ができてしまった(笑)。少年シューベルト

   も加わって(いたはずだ)、まあその賑やかなこと。

 

   でもこのおかげで、「白い馬」の記事の方向性が見えたと思っ

   たのだった。

 

   その時に、不思議とつながったのが葛飾北斎の存在で、偶然本

   書のあることをAmazonで知って、ならばとチャレンジしたまで

   はよかったのだが……。

 

   この頃、小さいポイントの活字の本が読みにくくなったのか、

   はたまた内容がのるまんじいのおつむにすっと入ってこなかっ

   たのか、本音を言うならば、いささかしんどかった。

 

   そこで、「ごめんなさい」をした訳だが、こちらもかのところ

   の解説をのぞいてみることにしよう。

 

   文化十四年(1817)の正月、葛飾北斎は洋琴(ピアノ)を作りたい

   という芝居の道具師・あざみに出会うが、北斎が収集した図譜、

   画帖の中にあったその資料が、何者かに盗まれてしまう。北斎

   とあざみは危機を救ってくれた千葉周作を仲間に加え、盗まれ

   た資料を追ううち、かつての老中・田沼意次が前将軍・家治と

   その世子を暗殺し、その事件に絡んで、東洲斎写楽が抹殺され

   たらしいことを知る。事件の背後に松平定信や水野忠邦の思惑

   も交錯し、幕府内部の暗闘へと繋がる、壮大なスケールの痛快

   時代ミステリー。 

 

   今こうして読んでも、興味は尽きない。意外な展開が待ってい

   たのかも知れない。

 

   「賄賂政治家」として悪名高く、志半ばで失脚する意次だが、

   現代になって、といってももう随分と前から再評価され始めて

   いる。のるまんじいにとっても、関心のある人物のひとりで、

   それは松平定信や水野忠邦よりも「おもしろそう」に思うのだ。

 

   大体、闇に葬られる側は葬る側からすれば、邪魔な存在であっ

   て、その場合、相手を「悪」に仕立て上げなければ、自分たち

   が権力の座に就く正当性が得られないから、「やっちまえ」と

   なるらしい。

 

   のるまんじいは「偏屈な」せいか、この“やられちゃった方”

   にどうしても興味が向く。何故、「やられちゃったのか」、あ

   るいは何故、「やられればならなかったのか」、正史に残され

   ることのなかった「真実」の方に気が行く。

 

   それは、田沼意次・意知親子だけに限らず、太古の昔から続い

   てきた権謀策略の渦巻く世界の中で、「ダマシ」に遭って無念

   の挫折、失脚を始めとして一族滅亡してきた人々を追いかけ、

   そして再び正しくスポットライトを当てみたらよいと思うのだ。

 

   また、やられちゃっった筈の悲劇の(?)一族で、ちゃっかり生

   き残りしたたかに続いていく存在からも、それはそれで目が離

   せない。  

 

   だったら「読めよ」である。

 

   本との出会いにもバイオリズムのような“波長”あって、今は

   うまくないけど、「そのうち」というものもあるだろうし、前

   はてんでお話にならなかったけれども、今なら「イケる」そん

   な本もあるように思うのだ。

 

   読めないことへのこじつけ、言い訳かなあ……。

 

   それでも最近出版されている本は概して活字が大きめに印刷さ

   れており、有り難い。全集とかのあの2段組のドーンと構えた

   本も昔は何の苦もなく読めたんだけど、今は「失礼します」状

   態である。

 

   眼鏡の上からかける「拡大鏡」、石坂浩二さんがCMでかけて

   いるハズキルーペでも検討しようかしら。うーん、そんな頃に

   なったか……。そうすることでこの原稿も打ちやすくなるなら

   …。

 

   この頃目が行くのは、そんなシニア向けグッズばっかりである。

 

   笑えねえなあ――。

 

   それはともかく。

   

   一般向け。葛飾北斎、千葉周作ファンはもちろんのこと、森雅

   裕ファン、ミステリー愛読者の方にお薦めだろうと思う。文庫

   化されたらいいのにと切に思う。

 

 

 

   ==============================================================

  

 

 

 

    ヘイリー・ウェステンラ

 

 

 

         「私を泣かせてください」

 

 

  

      

      http://www.youtube.com/watch?v=RcP83h9AQmc

 

  

 

 

         「フリース(モーツァルト)の子守唄」

 

               (日本語バージョンです)

 

  

      

      http://www.youtube.com/watch?v=LIvZotLS6so

    

 

 

  

 

         「アメージング・グレース」

 

 

 

      

      http://www.youtube.com/watch?v=BOrlCYp8TgU

  

 

 

   ==============================================================

  

 

 

      ハズキルーペ

 

 

 

 

      

      http://ハズキルーペ.公式サイト.com/

 

 

 

 

   ==============================================================

 

 

 

 

        北斎あやし絵帖    

 

 

 

 

 

 

                  森 雅裕/作

 

 

         

      

             1998年4月 初版 集英社刊<

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# 「おさがしの本は」
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  【こんな一冊の本】

 

 

 

 

       おさがしの本は

 

  

 

 

 

                  門井 慶喜/作
 

 ================================================

 

   

   

   

 

  人は、本作品『おさがしの本は』をビブリオ・ミステリーだ
  と
いう。

 

  そういうことにとんと疎いのるまんじいはこの度初めて“ビ
  ブ
リオ・ミステリー”なることばを知った。

 

  ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』(東京創元社刊)や紀田
  順
一郎氏の『第三閲覧室』がその代表作だと本書文庫本の解
  説に
あった。『薔薇の名前』はショーン・コネリー主演で映
  画化さ
れたものをテレビの放送で既に見ていた。小説を読ん
  だらもっ
と面白いだろうとその時は思ったのだった。

 

  ただ本書がそれらと大きく違う点は、悲惨な殺人が起きない
  の
だ。いやさ、血の一滴も流れることはないのである。

 

  では、いったいどんな内容なんだろうか。

 

  和久山隆彦、N市立図書館のレファレンス・カウンターに籍
  を
置く入職して7年目という彼が主人公。30歳前後といった
  とこ
ろだろうか。レファレンス・カウンターということばを
  耳慣れ
ないという方も多いかも知れない。

 

  そこでパソコンで確認してみることにした。上智大学のサイ
  ト
が上にあったのでクリックしてみた。

 

  すると

 

  利用者の研究や調査のために、どのようなレファレンス資料
  を
使えばよいのかを案内し調査の支援を行うことです。例え
  ば、

 
  ■
日本の経済援助(ODA)についてのレポートを書かなけれ
      ば
ならないが、そのための資料や文献をどのように探した
      らよいの

 

  ■『本居宣長』に関して最近書かれた論文はあるか

 

  など、調査・研究を行ったり、レポートを作成したりする際
    に、
どのようなレファレンス資料を利用したらよいのかわか
  らない
時は、レファレンスカウンターまでご相談ください。

 

  といった具合だった。この後ももっと具体的に書かれていて
  
大変興味深い。よろしければ、アクセスしてみられるとよい
  
と思う。

 

  司書職の中でのより専門的部署ということだろうか。

 

  本書の表紙は佐久間真人のイラストが描かれているが、重厚
  で
近代的な建造物の様相でおそらくどこかの図書館がモデル
  にな
っているのだろう。無機質な現代的建築物のそれでなく、
  暖か
みを感じることができる。

 

  だが、これはN市の図書館ではあるまい。というよりN市の
  図
書館の置かれている立場を考えるとレファレンス・カウン
  ター
の設置そのものだって贅沢な筈である。なんとなく読者
  の方に
は作品の抱える背景がこれでおわかりになっただろう。

 

  まあ、そのことはいずれまた。

 

  本作品は次の5つからなる連作短編集である、のだそうな。


 

       

        図書館ではお静かに

 

        赤い富士山

 

        図書館滅ぶべし

 

        ハヤカワの本

 

        最後の仕事  

   

 

  それでは、最初の「図書館ではお静かに」での和久山隆彦ク
  ン
の活躍をのぞいてみることにしよう。

 

  「シンリン太郎について調べたいんですけど」という相談な
  ら
、N市立図書館のレファレンス・カウンターに年に一度は
  必ず
来る。 

 

  こう作者は、書き起こす。

 

  でも、これだけで掴みは十分、だって「シンリン太郎」って
  読
めば、頭の上でちかっと電球が光ったはずだ。そうでなく
  ても
カタカナで文章が始まると新鮮味があるではないか。

 

  誰だ?「シンリン太郎」って読んで、思わず噴き出したのは?

 

  噴き出した人は、パソコンの漢字変換よろしく瞬間的に頭の
  中で
「森 林太郎」を思い浮かべたに相違あるまい。同じこ
  とを隆
彦クンもやったのだ。

 

  森 林太郎――

 

  夏目漱石と並ぶ明治の文豪、森鴎外の本名である。

 

  これまたちょっと待ってほしい。後で触れるから。あちこち
  に
紹介が飛ぶことをお許し願いたい。

 

  やってきたのは、K短大国文科、梨沢友一教授が担当する必
  修
科目のレポートを課せられた学生だった。

 

   林森太郎『日本文学史』を読み、考えたことを記せ。

 

   ※最初から最後まで読む必要はない。

 

  冷静な私たちなら“森林太郎”ではなく、“林森太郎”だと
  い
うこと。※が大きなヒントであることがわかる(笑)。

 

  しかしながら、森鴎外に対して「溺惑ぶりは尋常ではないと
  い
うのが学内学外のもっぱらの評価」だと言われる梨沢教授
  がこ
こ数年、森林太郎の関わる課題を出し続けていたのも隆
  彦クン
のアンテナがすんなりとキャッチした一因だったに違
  いない。

 

  昨年が『高瀬舟』、一昨年は『金比羅』だったという。

 

  そこで、隆彦クンは自信を持って、“林森太郎”を学生の或
  い
は教授の何かのミスと断定し、文学とはおよそ縁遠そうな
  学生
に向かって薀蓄を披瀝するのだった。

 

  鴎外がいまわの際に「石見人森林太郎トシテ死セント欲ス」
  と
いうことばを残したと。

 

  ちなみに。

 

  鴎外は三鷹市にある黄檗宗の禅林寺に間違いなく“林太郎”
  と
して眠っている。同じ寺に太宰治も眠っていていることは
  知ら
れている。のるまんじいは今を去ること数十年前にそこ
  で開か
れた茶会に参会して、お参りしたのだった。

 

  まあそれはともかく。

 

  隆彦クンが言うように本当に“林森太郎”は梨沢教授のミス
  だ
ったのだろうか。それが、ミステリーならば、みなさんに
  は直
接本書をお読みいただいて謎解きをしていただきたいと
  思う。

 

  読み終わった後で、思わず感嘆の声を漏らすような結末が用
  意
されていたことに気づくだろう。

 

  では、隆彦クンは職に忠実熱心な人物かと言えば、実は然(
  
)
にあらず、という状態にあった。

 

  大志に燃えて司書職に就いたのだったが、今では面白くない
  こ
とばかり見えてくる。図書館が市の行政機構の中で冷遇さ
  れて
いることに気づいたのだった。増改築が20年以上もなさ
  れてい
ないばかりか、規模縮小論が聞こえてきている。図書
  館費用は
お寒い限りだ。

 

  一方で市民の利用状況もよろしくなかった。

 

  しょせん図書館など知の宝庫などではない。単なる無料貸本
  屋
か、コーヒーを出さない喫茶店に過ぎない。

 

  となれば、隆彦クンは諦めをつけた。「馬鹿丁寧」な口調、
  「
役人」じみた対応は、その道の行き着くところに存在した、
  と
作者は書く。

 

  そんな隆彦クンの前に立ち塞がったのが、市長秘書室が副館
  長
として送り込んできた潟田直次その人だった。その目的は
  図書
館廃止にあった。同僚たちの助けを得て副館長に敢然と
  立ち向
かう隆彦クン。

 

  その隆彦クンに潟田副館長が突きつけた難題がこれ。

 

   或る一つの語をタイトルに含む本。

   その語は、

 

    A 意味的には、日本語における外来語の輸入の歴史を
      まる
ごと含む

 

    B 音声的には、人間の子供が最初に発音する音(おん)
         
によ
ってのみ構成される

 

  いかがだろうか。わくわくする、に違いない。これだけで答
  え
がわかったあなたは素晴らしい。答えはおそらく誰でも知
  って
いるだろう。

 

  これらは、「図書館滅ぶべし」にある。

 

  実はこのふたり意外と相性がいいのではないかと思った。立
  場
は違えど同じ根を有しているように思えるのだ。そうやっ
  て読
むと潟田氏がチャメに見えてきてしょうがない()

 

  かわいいなあ、もうって。

 

  最後に。

 

  5編目で。

 

  隆彦クンはある市会議員から内密にと釘をさしてこんな頼み
  ご
とをされた。

 

  登場人物の若い男が、例の身体的器官でもって白い障子をつ
  ぎ
つぎと突き刺した。この作品を今一度読みたいが。

 

  と。

 

  これまた、わたしたちは石原慎太郎氏の『太陽の季節』を思
  い
出すが。「つぎつぎと」というところに注目してほしい。

 

  開高健が作者の全集の解説を書いたとき、

 

  『太陽の季節』が売れたとき、先に世に出ていたこちらを思
  い
出した人はほとんどいなかった。自分(開高)のほかに荒正
  人と
臼井吉見くらいではなかったろうか。

 

  と。作者名を伏せるため一部変えさせていただいたことお許
  し
願いたい。

 

  隆彦クンは探しあぐねたが、潟田は知っていて即答してしま
  う。

 

  ここでは、作品名も伏すことにしよう。結構有名な作品なの
  だ
そうだ。

 

  おもしろかった。の、一言に尽きる。のるまんじいが図書館
  そ
のものをこよなく愛し(オーバーかな?)、その図書館が舞
  台に
なった作品だからこそ、面白くて仕方がなかったのかも
  知れな
い。本好きにとってはたまらないだろう。

  

  以前、児童書で、柏葉幸子さんの「つづきの図書館」(講談社

  刊)を紹介したことがあったが、こちらもビブリオ・ミステリ
  
ーといことになるのだろう。    

 

  合わせてお読みいただいたら、幸いである。

  

 

  ==============================================

  

 

 

     上智大学 レファレンスカウンターは

 
 

     http://www.sophia.ac.jp/jpn/research/lib/service/ref

 

 

 ===============================================

 

 

        おさがしの本は

 

 

 

 

 

 

                  門井 慶喜/作

   

 

         

      

            201111月 初版 光文社文庫刊

             

 

 

             光文社のホームページは

 

         http://www.kobunsha.com/

      

   

 

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# 「富子すきすき」
JUGEMテーマ:オススメの本

 

  【こんな一冊の本】

 

 
 

 

    富子すきすき

        

 

        

 

                  宇佐江 真理/作

 

 

 

 ================================================

 

   

 

 

  この本、『富子すきすき』という作品がいわゆる「忠臣蔵」
  の
敵役、吉良上野介義央の妻、富子の視点で描かれたものと
  知っ
たのがきっかけで自分がはまったら、ブログで取り上げ
  よう
と思い立った。

 

  以前から、「元禄赤穂浪士討ち入り事件」に興味がある。そ
  れ
も大石内蔵助以下四十七士の討ち入りそのものより、サイ
  ドス
トーリー的な表面には浮かび上がってきにくいそれぞれ
  の「討
入り事件」の方に目がいく。

 

  それで前に、ここで「『師弟愛』を育んだものは」と題して、

  茶人山田宗徧と四十七士のひとり大高源吾の交流があったこ
  と
を書いてみたことがある。

 

  さて。

 

  いつものように図書館から借り出したのは、文庫本だった。
  そ
の裏表紙にはこう書いてあった。

 

  夫の吉良上野介が内匠頭に斬りつけられた日から歯車は少し
  ず
つ狂っていった。赤穂浪士の討ち入りで上野介を喪った富
  子。
あの事件で得をしたものなど誰もいない。建前や武士と
  しての
体裁なんて関係ない。世間が何と言おうと、私にとっ
  てはたっ
た一人の優しい夫だったのに。妻から見た「松の廊
  下事件」と
は。

 

  ちょっと仰々しすぎる気もしたが、まあそう書いてあった。

 

  富子は奥州米沢藩上杉家の出で、夫義央とのいささか格差婚
  は
幕命だったそうで、受け入れざるを得なかったのだという。

 

  それで、内容だが。

 

  「その後」とあるように、事は起きてしまって、どうにも無
  念
なやり切れないそんな思いが作者の筆によって語られてい
  く。

 

  すでに富子は齢還暦を過ぎていた。事件前から白金の上杉下
  屋
敷にいた。夫義央との不仲説、富子の身を心配して家を出
  させたという説などがあるそうだ。

 

  妻として、母として亡き人を思い、家の将来を案じている。

 

  息子で米沢藩当主を既に隠居した綱憲を見るにつけ心が痛ん
  だ。
世間の目の冷たさが心労のあまり彼を老け込ませていた。

 

  今さら吉良、上杉を擁護し、つく者は誰もいなかった。

 

  「鷹の羽のいきおいつよき紋どころ、竹に雀はちゅう(ちゅう
  に
傍点あり)のねも出ず」

 

  鷹の羽は浅野家の紋、竹に雀は上杉の紋だった。赤穂の藩士
  の
勢いに上杉家の当主であった綱憲が手も足も出なかったと
  いう
落首だという。

 

  江戸城内では大名たちが浅野の家臣たちを武士の鑑ともては
  や
していると綱憲の跡を継いだ吉憲がぼやいていた。

 

  また、吉良家の養子に迎えた綱憲の次男、義周は信州高遠藩
  に
配流されていた。可愛い孫のその身が気になって富子には
  なら
なかった。

 

  内匠頭が刃傷に及んだ仔細をもっと突き詰めてほしかったと
  願
うも、もとより詮ないことだった。   

 

  すべてが、逆上のなせるわざだと。殿中の事件も将軍の即日
  の
処断も、そして敵討ちも。綱憲の逆上の種は、自身の中で
  溜ま
り腐って、綱憲の身体を蝕んで挙句の果てに倒してしま
  った。

 

  幸せとは何か、考えせられる。

 

  題名の『富子すきすき』であるが、若い頃の義央が閨で富子
  に
きまって囁いていたという、そこからきている。

 

  先程はまったらと書き、こんな風に紹介しながらも、のるま
  ん
じいははまったとは正直言い切れない。この作品に対して、
  申
し訳ないがもうひとつ食い足りなさを感じたのだった。も
  うち
ょっと深くならないだろうかと。「忠臣蔵」という期待
  が大き
かったせいもあるように思う。

 

  それはさておいて。

 

  本書は題名の『富子すきすき』を含めて6作品の短編からな
  っ
ている。

 

 

         藤太の帯

 

         堀留の家

 

         おいらの姉さん

 

         面影ほろり

 

         びんしけん

 

  というラインナップである。いずれも『富子すきすき』とは
  趣
も違い、江戸の市井に生きる人々を描いていてそのどれも
  が生き
生きとしかもせつなく胸に迫ってくる作品だった。宇
  佐江さん
のうまさが十分に発揮されている、そう思う。

 

  そんな中で、のるまんじいは最初『富子すきすき』ではなく
  て
『堀留の家』と『面影ほろり』の何れかで紹介しようと考
  えて
いたのが、書いているうちに上のような次第になってし
  まった
ので、予定を変更することにした()

 

  『おいらの姉さん』もいいなあと思ったが、あまりにも悲劇
  的
ではなから書けそうになかった。のるまんじい的にはこの
  3作
品を特にお薦めとしたい。

 

  この時期に本書を取り上げたかったのも『堀留の家』に訳が
  あ
る。

 

  当時は旧暦だから“薮入り”には、まだ1月ぐらいはあるだ
  ろ
うが。でも、この暑い時期だからこそ、お誂え向きの作品
  だと
思ったのだ。小道具の西瓜も季節感をさりげなく表して
  いる。

 

  深川佐賀町にある干鰯(ほしか)問屋「蝦夷屋」の手代の弥助
  は
薮入りのその日を持て余していた。帰る家がなかったから
  だ。

 

  そんな時、幼い頃を「堀留の家」で共に過ごしたおかなに一
  緒
に帰るように促される。おかなも蝦夷屋で雇われていた。
  「堀
留の家」では、元岡っ引きの親分鎮五郎夫婦が親に捨て
  られた
り、暴力を受けたりしていた子どもたちを引き取って
  育ててい
た。

 

  おかなは弥助を慕っていたこころが、いつかそれとは違った
  感
情に変わってようになっていた。それを知って弥助の心に
  波は
立ったが、堀留の家を忘れたいという思いから弥助は一
  緒にな
る気がないとおかなに告げるのだった。

 

  で、その後どうなったか…、それはお読みいただくことにし
  よう。

 

  のるまんじい、最後のところで、もうダメだった。号泣した
  と
いってもいいだろうか。こんな終わり方を用意しておくな
  んて
宇佐江さん、そりゃあずるいよ、そんなだった。通勤電
  車の中
なんかで読めやしない。ここまで人の心を揺さぶりや
  がるか、
そう毒づきたかった。

 

  それによその方のブログを読んでも、こちらの方の評価が高
  い
し、紹介されていたので、どうかと思った。

 

  それにしても、テレビ化されても、ここで泣くだろうな…。

 

 

  『面影ほろり』

  


  病を得た母親おたもが養生する間、父親と親しかった辰巳芸
  者
浅吉の家に預けられることになった材木問屋「大野屋」の
  跡取
り息子市太郎が本作品の主人公のように思えるが、ここ
  は浅吉
姐さんの粋っぷりに注目したい。

 

  いい女なんだろうなあと。「小股の切れ上がった」というこ
  と
ばを思い出した。若い方たちには通じないだろうなと思わ
  ずに
やついてしまった。意気地と張りを通した女性になると
  解説で
梶よう子さんは記している。

 

  のるまんじいとしては、もうちょっと違った終わり方を期待
  す
るがいかがだろう。さらっと終わったというかちょっと物
  足り
ないそんな感じがする。

 

  世間知らずで自由奔放のぼんぼんの市太郎が浅吉や手習い所
  の
師匠正木辰之進らと触れ合ううちに成長していく話だ。

 

  この市太郎をドラマ化したとき、どんな子役にやらせたらぴ
  た
っとするだろうかと考えた。

   

   

  『堀留の家』の弥助の子ども時代だったら、やっぱり小さい
  時
の森田直幸くんがぴったりだと思うのだが。市太郎となる
  とど
うだろう。

 

  『藤太の帯』も面白い作品だと思う。1本の帯が古着屋から
  売
りに出てめぐりめぐって…。奇抜な柄の帯を締めるのは力
  がい
るだろう。それも俵藤太の百足退治が縫い取りされたも
  のだな
んて。

 

  梶よう子さんは解説で書く。

 

  それぞれの物語に登場する女たちがさまざまな岐路に立たさ
  れ
たとき、どのような選択をし、決断をするのか。戸惑い思
  い悩
む姿が切なく描かれる。

 

             (中略)

 

  人がひとつの道を選ぶということは、その当事者の未来だけ
  で
なく、そこに関わる人々にも影響を与えるのだと知る。

 

  女性の視線で読むとまた違った物語が見えてきそうである。

 

  そろそろ終わりにしよう。だが、その前に。

 

  “時代小説”、この中の作品群はいずれも江戸時代を舞台に
  し
ているが、注意をしてないとふっとそれを忘れてしまいそ
  うな
感覚に陥った。ふと気づいて、そうだよ、みんなきもの
  を着て
、男だったらちょんまげを、女だったら島田を結って
  いるんだ。

 

  ビルもアスファルトの道路も車もないんだよな、と。それは
  ど
の物語に登場する人物も生き生きとしていて、今自分たち
  と一
緒に呼吸をしているような、そんな錯覚をしていたのだ
  った。

 

  物語そのものの表現が今を生きる私たちが使うことばで表現
  さ
れ、またほとんど同じことばを使って話しているせいかも
  しれ
ない。

 

  その表現方法を否定するものでは決してないことをお断りし
  て
おこう。この“錯覚”は読み手であるこちら側に責任があ
  るの
だから。そんな当時のまんまで書かれたらのるまんじい
  は太刀
打ちできないだろうから()

 

  ただ、自分自身に向かって「気をつけろよ」と語っているだ
  け
だ。

 

  一般向け。時代小説が好きな方はもちろんのこと、性別を問
  わ
ず、そして幅広い世代の方に読んでほしいと思う。宇佐江
  ワー
ルド、奥が深いですよ!

   

 

 

 ================================================

 

 

 

          富子すきすき

        

 

        

 

                宇佐江 真理/作

 

         

      

             2012年3月 初版 講談社文庫刊

             

             

 

 

            講談社BOOK倶楽部のホームページは

 

 

        http://bookclub.kodansha.co.jp/

     

   

 

  

  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

    ================================================

 



 
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# 「牧師館の殺人」
JUGEMテーマ:気になる本
 
 
 
  【こんな一冊の本】
 
 
 
 
      牧師館の殺人    
 
                           
 
     
 
                 アガサ・クリスティ/作
                 羽田 詩津子/訳
 
 
 
 
 ==============================================================
   
   
   
 
 
 「何で今頃アガサなの?」
 
 「別にお前が今さら紹介なんて…」
 
 そんなお声が聞こえてきそうなそんな1冊です。まず本書の
 巻頭に、アガサの娘、ロザリンドの息子、つまり
はアガサに
 とっては、孫のマシュー・プリチャードの「『牧
師館の殺人
 』によせて」という文章が載っていて作品とは別
に、注目さ
 れます。

 
 内容はどうぞ直接手に取ってお読みください。
 
 そして、もう1つの理由として、本書が新訳されたものだと
 
いうことです。今の私たちの使っている日本語で1930(昭和
 
5)年に初めて登場したミス・マープルが活躍する『牧師館
 
の殺人』が読めるからです。
 
 以前から新訳された作品をいくつか取り上げてきましたが、
 
今回もそれらと同じ思いで読んでみました。好みは人によっ
 
てさまざまですから。読み比べてみると面白いでしょうね。
 
 Amazonさんには、
 
 嫌われ者の老退役大佐が殺された。しかも現場が村の牧師館
 
の書斎だったから、ふだんは静かなセント・メアリ・ミード  
 村は大騒ぎ。やがて若い画家が自首し、誰もが事件は解決と  
 思った……だが、鋭い観察力と深い洞察力を持った老婦人、  
 ミス・マープルだけは別だった! 
 
 出だしが辛くて何度放り出そうとしたことか。それでも、や  
 がて作品の中に引き込まれている自分に気づきました。
 
 真犯人は、ああやっぱりね。でした。どんでん返しという感
 じです。
 
 それから。
 
 翻訳者の羽田詩津子さんからも目が離せませんねえ。大変な
 「猫好き」でらっしゃいます。こちらの方面、気になりませ
 ん?
 
 安西水丸さんの表紙絵もいいですねえ。
 
   
 
==============================================================
 
 
 
 
    アガサクリスティ ファンクラブのホームページは
 
 
 
 
      
http://www.ab.cyberhome.ne.jp/~lilac/christie/
 
 
 
 
 
    フェローアカデミーの羽田詩津子さん紹介です
 
 
 
       
http://www.fellow-academy.com/fellow/pages/tramaga/backnumber/274.jsp
 
 
 
   新訳で読めます

 
 
     「飛ぶ教室」  
 
 
     (エーリヒ・ケストナー作 丘沢 静也/訳)
 
 
 
     「車輪の下で」
 

    
      (ヘルマン・ヘッセ作 松永 美穂/訳)
 
 
 
==============================================================
 
 
 
 
        牧師館の殺人                               
 
     
 
                 アガサ・クリスティ/作
                 羽田 詩津子/訳
 
 
              2011年7月初版  早川書房刊
             
 
 
          早川書房のホームページは

 
 
       
http://www.hayakawa-online.co.jp/
     
   
 
   
   ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
   ==============================================================

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