まあやんの 徒然なる日々

お薦めの本の紹介と移ろいゆく日々の中から目にしたことを綴るブログです
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# 「野の人 會津八一」
JUGEMテーマ:オススメの本

 

 

 

  【こんな一冊の本】

 

 

 

 

      野の人 會津八一     

 

 

 


 

                  工藤 美代子/著        

                    

 


  ===============================================

                           

 

 

 昨年の7月にNHK教育テレビの「新日曜美術館」で「広目天の

 まなざし 〜會津八一の愛した奈良の仏〜 」という題で、歌人

 でまた美術史家の会津八一を取り上げていました。

 

 この時期に「奈良」のことが頭の中にありましたので、むこう
 ら会津さんがやってきてくれたと思い、再放送を含めてとて
も興
 味深く見ました。

 

   

   びるばくしや まゆね よせたる まなざし を

 

     まなこ に み つつ あき の の を ゆく

 

                   「南京新唱」

 

   

 びるばくしゃとは、東大寺戒壇院にある四天王の1つの広目天
 ことだそうですが、その像と会津の目つきがそっくりだと言
われ
 ていたところからの題のようです。

 

 この本『野の人 會津八一』では、その会津八一の生涯にスポ
 トを当てて人となりを描いています。これまでは会津に教え
を受
 けた人たちが「師」の姿を書いた著書が多かったのですが、
この
 著作はそれらとは異なったどちらかというと客観的な視点
で書か
 れています。

 

 特に、こんなことを著者は「あとがき」に残しています。

 

 

 神は八一に芸術的な才能も学問的な知性も与えたが、男として
 性的な魅力だけは与えなかった。

 
ここでは、会津が女性に対して、不器用でいじらしくもあり、
 なさまで取れるような、終生恋焦がれていた画家・亀高文子
との
 関係をかなり丁寧に追っています。

 

 また、「新日曜美術館」でも放送されていましたが、早稲田大学
 
教授在職当時の1943(昭和18)11月、に行われた「最後の奈良研
  究
旅行」の様子には本書で読んでも改めて胸が打たれます。学徒
 
出陣をしていく学生たちと10日間旅をするのです。

 
奈良での定宿、日吉館の思い出。そもそも日吉館を知らない方
 多いでしょうね。のるまんじいも泊まる機会を持てませんで、

 前だけ知っているだけです。中学や高校生の時代にその前を
通り
 過ぎていたかも知れませんが。

 

 特に、その日吉館と会津の教え子の永井進さんのエピソードは、

 のるまんじいが下手に語るよりも本をお読みいただく方がよいで
 しょう。

 

 また、会津が、今は再建された薬師寺の西塔の礎石の前で講義
 る一葉の写真を見るだけでも、その時の空気が伝わってきま
す。

 

 

    すゐえんの あまつをとめが ころもでの

 

      ひまにもすめる あきのそらかな

 

                   「南京新唱」

 

 礎石に運よく水があれば、東塔の水煙に透かし彫りされた飛天
 姿を見ることができると、中学の修学旅行で訪れた際にうか
がっ
 たように思います。

 

 薬師寺が出てきましたので、すぐ近くの唐招提寺にある歌碑に
 まれた1首もご紹介したいと思います。

 

 

    おほてらの まろきはしらの つきかけを

 

つちにふみつつ ものをこそおもへ

 

 のるまんじいの大好きな短歌2首です。

 

 “まろきはしら”はエンタシスといって、ギリシャ・ローマ建築

 の影響を受けていると聞き、ここでは遥かシルクロードに想いを

 はせたのでした。

 

 なお、早稲田中学で会津が教頭の職にあったころを描いた『鳩
 橋(小笠原忠/作)についても本書で触れられています。こん

 場面があります。中学生が登校中に鳩を夢中になって追いかけ

 犬養毅邸に入って、玄関番に捕まってしまいます。無事に登校

 たものの、後で呼び出されます。廊下を歩きながら、退学になる
 のか心配しますが
、教頭先生が叱らずに逆に思いやりのことばを
 かけてくれたのでした。

 そんな
話を読んだことがあります。1度は通して読もうと思って
 いる
のですが、未だ果たせていません。

 

 会津の短歌にはあまり述べられていませんので、そこはご注意
 ださい。

 

 一般向け。高校生以上の方にお薦めします。

 

 

  ===============================================

 

  

 

        野の人 會津八一     

 

 



                   工藤 美代子/著  

 

 

 

            2000年7月 初版 新潮社刊

             

 

 

            新潮社のホームページは

 

      http://www.shinchosha.co.jp/

 

 
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆     
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| comments(2) | trackbacks(0) | 09:59 | category: 書籍 「詩 短歌 俳句」 |
# 「おうい雲よ ゆうゆうと 馬鹿に のんきさうぢやないか」
JUGEMテーマ:オススメの本

 

 

 

 【こんな一冊の本】

 

 

 

 

      おうい雲よ ゆうゆうと 馬鹿に 

 

              のんきさうぢやないか      

 


 

                   山村 暮鳥/詩        

                   島田 光雄/画

 

 

 ================================================

 

 

   

 図書館でも、あるいは行きずりの書店であってもそうだが、ふ
 ふらとその中を歩いていて、別段意識している訳ではないの
に、
 ふいと目に止まるそんな本がある。

 

 まるで向こうの方から、「待ってたよ。もう、気がつくの遅いね
 
え」とそんな感じで誘ってくれているように。

 

 

        おうい雲よ 

     ゆうゆうと 

     馬鹿にのんきさうぢやないか

     どこまでゆくんだ 

     ずつと磐城平の方までゆくんか

 

 

 この詩と初めて出会ったのはいつの日のことだったろう。どう
 って、知ったのだったのだろうか。中学校の国語の授業で、
教科
 書あたりで習ったんだろうか。

 

 あまりに短くて、さり気ない詩を、自我をどうやって外に向け
 うかともじょもじょしている中学生だったから、まあ、教科書

 載っている、ただの押しつけの「詩」ぐらいにしか捉えな
かった
 だろう。それでもなんとはなしに、無意識の中で自分の
心の中に
 自然と受け入れていった1篇の詩、そんな気がする。

 

 それが、大人になって、真っ青な夏空と緑なす大地の中を白い
 が行くそんな写真と共にあったこの詩とある日、突然合い
(まみ)
 えたとき、心を揺さぶられずにはいられなかった。そ
れは、齢を
 重ねていたからだろうか。

 

 おとなになれば、時間という得体が今ひとつ知れないものに誰
 もが追いまくられて、心を亡くしたような空虚感に襲われる
ので
 はないか。

 

 そんな時に、この詩と出会ってしまったのだった。

 

 おまえは、いいなあ。何に悩まされるでなく、汚れなき己が身
 青空に浮かべて、患うことなく、ゆうゆうと流れていけて。
人間
 とは別の時の流れの中で。おれとは随分と違うよなあ。
そんなふ
 うに憧れをこめてその時は読んだのだった。

 

 そして、読み手の視点が、見晴らしのいいどこか小高い丘あた
 から、白雲に向けられているのではないだろうか、はたまた
草原
 に寝転んで青天井を見上げているようにも思えるのだった。

 

 それが、ここでもう1度、1冊の詩集という形で出会うことに
 った。題が題だもの、手に取りたくなって、読みたくなるじ
ゃな
 い。

 

 以前に出会ったことのある詩、親しみを覚える詩、懐かしい響
 で呼びかけてくる詩、農村を眼前に浮かべる詩、思わず微笑
んで
 しまう詩、ぐっとくる詩。

 

 コンパクトなはがき大の1冊の、その中は渋くて淡くはあるよ
 だけれども、己が輝きを放っている詩がぎっしり集められて
いる。

 

 
         
たつぷりと春の河は 

       ながれてゐるのか 

      ゐないのか

      ういてゐる 

      藁くづのうごくので 

      それとしられる

              (春の河)

 

   

      雲もまた自分のやうだ 

      自分のやうに 

      すつかり途方にくれてゐるのだ  

      あまりにあまりにひろすぎる

      涯のない蒼空なので

      おう老子よ 

      こんなときだ

      にこにことして

      ひよつこりとでてきませんか

                  (雲)        

 

      まづしさのなかで

      生ひそだつもの

      すくすくと

      ほんとに筍のやうだ

      子どもらばかり

              (こども)

 

      こどもが

      なき、なき、

      かへつてきたよ

      どうしたのかときいたら

      風めに

      ころばされたんだつて

      おう、よしよし

      こんどとうちやんがとつつかまえて

      ひどい目にあはせてやるから

                 (こども)

 

      沼の上を

      驟雨がとほる

      そのずつとたかいところでは

      雲雀が一つさへづつてゐる

      ぐッつら

      ぐッつら

      馬鈴薯が煮えたつた

              (驟雨)

 

 

 読んでいけばいくほど、味わいが深くなっていく詩が編者の田
 和雄さんの手によって採られている。平明なことばで、けれ
んみ
 のない味わいの詩がつづいていく。

 

 そこで、はたと気がついた。

  

 山村暮鳥という人はいったいどういう人だったんだろうか。ど
 生きたんだろうか、と。

 

 1884年といえば明治17年にあたるが、群馬県は現在の高崎市
 生まれている。複雑な家庭に生まれ、貧しさの中で少年時代
を過
 ごしている暮鳥。そのころの暮鳥少年は何を見て、何を感
じて育
 っていったんだろうか。また、どうやって感性を育んで
いったの
 だろう。

 
やがて群馬の教会で受洗している。そこにはどんな力が働いた
 だったろう。

 

 教会の片隅の固い椅子に座って神に必死に祈る暮鳥少年の姿が
 かんではこないか。

 

 その後、日本聖公会の伝道師として各地で布教活動に携わる。
 作に励む中で、萩原朔太郎、室生犀星、三木露風たちと交わ
る。
 やがて、結核に罹る。詩集『雲』の校了をみた翌日、
1924
(
 正
13)に帰天している。蛇足であるが、のるまんじいの
親たち
 はこの年に生を受けている。だから、遠い昔のような気
がしない
 のだ。

 

 こんな羅列では、暮鳥の人となりも何もあったものではないが。

 

 また、当時の詩壇からは暮鳥の作風が受け入れなれなかったと
 る。進歩的ではたまた実験的でダダニダムの影響を受けた作
品は
 評価されなかった。

   

 萩原朔太郎が追悼文『山村暮鳥のこと』で次のように述べている。
 「彼自身の見たる如き、ちがつた意味での基督教を信じて
ゐたに
 ちがひない」とあるが、それは神の捉え方の違いによる
熱狂的な
 信徒からの圧迫を物語っている。

 

 暮鳥の信仰に対して、異教と感じる周囲からの差別もあったら
 い。いずれも、見てきたような話であるので、あくまでもち
ょっ
 とした参考までにとどめていただきたいが。

 

 結核と貧困に苦しみながら、生きにくい、まことに生きにくい
 々の中で、もがきにもがいて、それでも詩作を続けていく暮
鳥と
 いう人の姿が彷彿してこないだろうか。晩年といっても3
0代の
 後半には作風も変わり、いたって平明な詩になっていく。  

 

 ところで、『おうい雲よ』には違った一面があった。

 

 病気が進み、床に伏すようになった時、雲を見ながら、ずっと
 くに住む弟子のことを思って作った詩なのだそうだ。結核が
不治
 の病だったあの時代、余命の行き着く先を思っていただろ
うか。

 

 詩は読む人の読みたいように読ませてもらっていいような気も
 る。人生の春夏秋冬それぞれの時期によって同じ詩を違う捉
え方
 で読んだとしても構わない気がする。生気の萌え出ずる“
春”、
 そして思索の“秋”で感じ方は違うだろうから。

 

 いやはや、きょうはなんとも理屈っぽい文章になったなあ。暮
 さんの詩とはまるで正反対のようなのである。完全ノックア
ウト
 をくらったくせにである。まあ、いいや、きょうは固いま
までい
 くことにしよう。

 

 たまには、コンパクトなこんな詩集をポケットに入れて、外に
 かけて、ふっと読みたくなったら、ちょっとページを繰るな
んて
 やってみては如何だろうか。子どもたちは、ちょっと刺激
が少な
 いように感じてしまうかもしれないが、この小さな刺激
が大人に
 なって大きな水脈になっていくことを思って読むこと
を薦めたい。

 

 長くなってまことに申し訳がないが、暮鳥さんの『雲』の序文
 載せさせていただく。味わい深くここにすべてが語られてい
るよ
 うで。

   

  

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| comments(12) | trackbacks(0) | 07:06 | category: 書籍 「詩 短歌 俳句」 |
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